石畳の道とのんびりとした地域猫。
国際通りの近くにありながら、その通りに入ると沖縄らしい何とも言えない穏やかな空気が流れる「壺屋やちむん通り」。
沖縄の焼き物である「やちむん」の工房や店舗が立ち並ぶこの通りの一角に、ふわりとお茶の香りが漂う、静かで温かなカフェ&ギャラリーがあります。
観光客が多く訪れるこの地で、沖縄の伝統文化と丁寧に向き合いながら営まれているそのカフェを訪ね、沖縄やカフェへの思い、そして黒人参茶との出会いについて、店主である島袋さんにお話を伺いました。
<プロフィール>
うちなー茶屋&ギャラリー ぶくぶく オーナー島袋さん
沖縄県出身。
県内外の飲食店勤務を経て、2016年よりぶくぶくにて勤務。2018年よりオーナーとして現在のうちなー茶屋&ギャラリーを運営。

CONTENTS
沖縄の伝統をカジュアルに届ける
── 長くお付き合い頂いているので改めてという形になりますが、まず、お店のコンセプトから教えていただけますか?
(島袋さん) まず大きなところでは、”沖縄の伝統を伝えていく”ということに軸においています。
「伝統」を気軽に楽しんでもらうために、カフェ&ギャラリーという形態をとっており、店内では沖縄の伝統工芸品を販売し、飲み物は「ぶくぶく茶」を中心にお出ししています。取り扱うものはすべて、沖縄に関係のあるものにこだわっていますね。
あとはカラダに良いものを出したいという想いもあるので、沖縄に関係があるもの、そしてカラダに良いものを沖縄の伝統的な工芸品と合わせて楽しんでいただくカジュアルなカフェですね。

── お店の名前にもなっている「ぶくぶく茶」。聞き慣れない方も多いかと思いますが、そもそもどんなお茶なんでしょうか?
(島袋さん) 泡がふわっと乗っている、見た目にも楽しい伝統的なお茶なんです。
名前の由来には諸説あって、泡が「ブクブク」していることから来ているとも言われますし、幸福の”福”という字「福福茶(ふくふくちゃ)」から転じたとも。
明治時代から飲まれてきたという説や琉球王朝の時代から飲まれてきたという説があり、そのどちらかという話なんですが、まだ様々な文献を見てもはっきりしていないというのが正直なところのようですね。

── お祝い事とか特別な時に飲まれていたんでしょうか?
(島袋さん)そうですね。昔はお祝い事とか来客の歓迎をする時なんかに出されていたようで、中国からのお客様をおもてなしする時に出していたという記録はあるようです。
泡が幸せのイメージがあったそうで歓迎の意味でお出ししていたものが、お祝いの席や旅立ちを応援するような席で振舞われるようになっていったそうです。
新たな広がりを感じるやちむんの世界
── お客様の層はどのような感じでしょうか?
(島袋さん) シーズンにもよりますが約8割が県外の方で、地元の方は2割くらい。年齢層は幅広く、最近は30~40代の家族連れが多くなりました。
以前はもっと年配の方が中心でしたね。
やちむん通りに来た流れで立ち寄ってくださる方も多いです。
コロナが落ち着いてからここ数年はどんどん人が増えてきて、ありがたいことです。

── そうですね。あの時期は飲食店さんやホテルさんに商品を卸していた私たちもかなり厳しいものがありました。
(島袋さん)そうそう、焼き物を販売するのでお店は空けてたんですけど、1日2人くらいしか来客がない日々が続いたので本当に大変でしたね。もちろん発注なんかできないですし。
── 最近では結構若い作り手さんも増えてきているようなので、お客さんの層にも影響しているのかもしれませんね。実際にやちむん通りの周辺店舗を見ていても海外の方や若い方が確実に増えてきてますね。
(島袋さん)そうですね。ちょうど昨日読谷村(よみたんそん)でやちむん市があってお手伝いに行ってたんですが、オープン前に300人くらいの列があったんですよ。
しかも結構若い人が多くてびっくりしたんですが、最初はやちむんの事を全然知らなかったけど沖縄に来てハマったという方だったり、作り手さんのファンだったりね。
ここのお店も国際通りから近いので、ちょっと立ち寄ってみましたーって方も多いですが、色々なきっかけからやちむんを始めとした沖縄の文化に触れて、興味を持たれる方も増えてきて、これまでとはちょっと違う広がり方をしてきている印象です。

「沖縄、健康、珍しい」 ― 黒人参茶との出会い
── 黒人参茶はいつ頃からお取り扱い頂いてましたっけ?ちょっと記憶が怪しく…
(島袋さん) 私もはっきりとは覚えていないのですが(笑)たしか2018年頃からだったと思います。
「沖縄らしくて珍しいお茶とかないかなー」と結構検索してた時期で、そのタイミングで見つけてご連絡したんじゃないかな。
沖縄の食材を使ってるし、無農薬だし、健康にも良さそうだしってところで。
それ以降、メニューとしても提供しているんですが、実際に健康志向の方に特に喜ばれています。
うちのお店ではホットでお出ししているんですが、インナーからのケアじゃないですけど、暑い時期でも温かいものを飲みたいというお客様も多く、反応が良いですね。
あとは3種から選べるっていうのも魅力のひとつかなと。
お店で人気なのはビューティーかリラックスか…女性はビューティーが多い気がします。
── そうなんですね。
実は全体的にはクレンズが一番人気なんですよ。飲み始めたらハマるようで、お茶を飲みなれている方はクレンズがマッチする率が高い気がしますが、やっぱりウコンが入っている=苦いってイメージとかあるんですかね。
(島袋さん)それはあるかもしれませんね。あとはノンカフェインってところだったり、”ビューティー”、”リラックス”って名前がイメージし易いのもあるのかもしれませんね。

── 島袋さんのお気に入り黒人参茶は?
(島袋さん)僕はリラックス推しでした。最初にいただいた時から飲みやすい印象があって、レモングラスの爽やかな感じにハマって、ずっとリラックスを飲んでたんですけど…
最近ビューティーが伸びてきたかなー。
もともと月桃茶は飲んでたんですが、今は自分の中で月桃ブームがきているのもあって、最近はビューティーを飲むことが多いですね。
月桃とカラキはそこ(お店の外)でも植えていて、たまに葉っぱをもいでお茶にしたりしています。
── 月桃いいですよね。
個人的には島月桃*¹の精油はお気に入りです。
成分的にも抗酸化で有名なフラボノイド(ポリフェノールの一種)も沢山入ってるし。
本州では花粉症シーズンになるとビューティーのオーダーが増えるんですよ。炎症を抑えたり、抗菌作用が強かったりっていうのも南国の植物ならではのところがありますよね。
(島袋さん)そう、月桃の香りはやっぱり落ち着きますよね。
沖縄では昔からお茶にしたり、むーちー*²に使われたりして馴染みがあるので、結構好きな方が多い気がしますが、初めての方だと香りがちょっと苦手かもっていうお客様もたまにいらっしゃいますね。
個人的には私も月桃好きなので、美肌とか抗菌作用とかもあるからめっちゃいいですよ!って勧めてます(笑)

*¹ 島月桃:沖縄や南西諸島などに分布する月桃の在来種。対して、タイリン月桃は小笠原諸島や南西諸島、台湾などに分布する。
*² むーちー:健康祈願や厄除けなど沖縄の行事で食される、月桃の葉で包んで蒸した伝統的な餅菓子の一種。
(島袋さん)ちなみに大屋さんはどれが一番推しなんですか?
── 言いづらい…こともないか。やっぱりクレンズですね。
一番お茶っぽいというか、普段飲みにしっくりくるというか。開発時に製造の方からウコンのバランスを抑えた方が良いんじゃないかという意見もいただいたんですが、貫いて良かったなと。
あとはクレンズに限らず、手軽に美味しく飲めるってのも黒人参茶の大きなポイントです。
社内ではお客様用にはポットに入れて出したりしてるんですが、私は面倒なので500mlのペットボトルやクリアボトルにティーバッグを入れて、入れっぱなしで飲んでいます。
(島袋さん)そのまま入れてても渋くなったりしないのがめっちゃ便利ですよね!
──そうそう。なので、夏場とかは結構持ち歩いています。
知り合いからは「何飲んでんだ?」みたいなことを聞かれますが(笑)

── ゴールデンラテはいかがでしょう?
(島袋さん)ゴールデンラテは確か黒人参茶のあとに取り扱いを始めたんですけど、お店のコンセプトにも合うし、直感的に面白いなって思ったのを覚えてますね。
2、3カ月に一回来店されて、都度まとめて購入される常連さんもいらっしゃいますし、リピーターさんが非常に多くてお店的にもありがたいアイテムです。
あと、海外の方、特に韓国の方に人気ですね。
”ラテ”と書いているので、「コーヒーが入ってるの?」って聞かれますが、お店で飲んで「美味しい!」とお土産用にまとめて買って帰られる方が多いです。
あとは国内外問わず、健康志向の方が選ばれることが多い気がします。
やちむん通りは女性のお客様が多いんですが、食品に限らずゆっくりと自分に合ったものを探されている方が多いので、そういったお客様にマッチしているんじゃないかなと思いますね。

スローなリズムだからこそ生まれたものがある
── 話は変わりますが、島袋さんが思う沖縄の魅力ってどういうところでしょう?
(島袋さん)子供の頃から沖縄で育って、沖縄が嫌になって、関西に出て、日本が嫌になって海外に行って、結局沖縄に戻ってきたんですけど、やっぱり外に出てその魅力に気付くというか。
まず沖縄ってテンポがのんびりしてるじゃないですか。高校生の時は「このまま大人になったらなんかゆるーくなっちゃいそうだし、可能性も広がらないし、この小さな島で何ができるんだろう」という漠然とした不安もあったんですよね。

── 今みたいにネットでサクッと調べたりする時代でもないし、どうしても見える範囲が狭くなりますよね。目の前にある現実が全てみたいな。
(島袋さん)そうなんですよ。でも、出てみたら逆だったというか。
県外に出て仕事をしてみて思ったのが「ないない」って思ってたこの小さな島の中にビジネスチャンスもいっぱいあるし、むしろこの緩さに魅力を感じていらっしゃる方も多いわけだし、このスローなリズムが沖縄なんだな、このリズムだからこそ生まれるもの育ってきたものがあるんだなって。
なので今は沖縄が好きですよ。やっぱり生まれ育った地域なので気候も自分の身体に合っているんだと思いますしね。
まあ、大阪から戻ってきたときはやっぱりイライラしましたけど(笑)
でもね、開き直るというか、受け入れることができるようになって、イライラも消え、噛み合うようになってきたという感じですかね。
そして気付いたら自分もいつの間にかそうなっていくというね(笑)
それが沖縄だし、このスローな時間の流れこそ沖縄という土地と人が作りあげてきたひとつの大きな魅力なんだなって今は思いますね。

「広げる」より「根ざす」― ゆっくりとした時間を大切に
── 最後に。今後についてですが、事業はもちろん個人的にやりたいこととか教えてもらっても良いですか?
(島袋さん)まず、お店としてはオリジナルの商品製造というか、やはり焼き物の街なので、ぶくぶく独自の製品を作りたいという想いはありますね。
「お店を増やさないか」「規模を大きくしないか」といった話もあるんですけど、そういう気持ちはあまりなくて、むしろ地元にしっかり根を張った店でありたいです。SNSでどんどん発信して、集客して、スタッフを増やしてというのもひとつのあるべき姿なのかもしれませんが、自分が求める姿とは違うんじゃないかと。
伝統を伝えていくこと、楽しんでもらうことを大切にしたいので、少なくとも私たちが追うものは規模ではないなと思っています。

あとは個人的にはこじんまりしたことをしたいというか…
「まちやぐゎー」って意味わかります?
── まちやぐゎー…わからないですね
(島袋さん)田舎にある商店とか雑貨屋とかを意味するんですが、小さなローカル店をやりたいんですよね。店に入ったらおじさんとかおばさんが出てきて、バーって喋って帰っていくみたいな(笑)
地元がうるま市なんですけど、ぶくぶくでも出している氷ぜんざいとかお茶とかをちょこちょこと出しつつ、売上にはあまりならないだろうけど、地域の人が立ち寄って喋れるような場所を作りたいなというのがありますね。
── 私が駄菓子屋をやりたいっていうのとちょっと近い気がします(笑)
(島袋さん)そうそう。やっぱり駄菓子屋って楽しかった思い出ありますよね?
昔、近所でここ駄菓子屋なの?って思うような古民家で駄菓子屋をやっているおばあちゃんがいて、ずっと行ってたんですよ。あそこに行けばなんか楽しいことがある!みたいな感じで。
残念ながらどんどん減ってしまってるけど、なんかそういうのって大事だなって思うし、僕自身が好きなので、子供たちを相手にするのでも良いし、大人が集まる場所でも良いし、まだ夢の段階ですがなんかそういう場所を作りたいなって真剣に考えています。
── ありがとうございました!

- Editor’s Note -
久しぶりに訪れた壺屋やちむん通り。
石畳と赤瓦、そしてぽつりぽつりとどこからともなく現れる人なつっこい猫。
沖縄らしい落ち着いた空気が流れ、焼き物好きはもちろんですが、雑貨好き、猫好き、石畳好き(あまりいませんかね?)にもぜひ訪れていただきたいスポットのひとつです。
急がず慌てず「本物」を選ぶ感性が、自然に人を惹きつける
国内外からの観光客が増え、ややもすると多店舗展開や事業拡大の方向へ舵を切りそうなものですが、この沖縄のゆったりとした空気とシンクロするように、自分たちのペースで、地元に根差した商いを続けるという姿勢がとても印象的でした。華やかに拡大するのではなく、「今あるもの、伝えるべきことを大切に、ゆっくりと届ける」。そんな在り方が、訪れた人の心に残り、再びこの場所を訪れさせるのかもしれません。
いつか島袋さんがオープンした”まちやぐゎー”でゆっくりゆんたく(おしゃべり)しながら、氷ぜんざいを。
そんな日を楽しみにしています。
《インタビュー中に出てきたあれこれ》

〇壺屋やちむん通り
沖縄県那覇市にある”やちむん(琉球王朝時代から続く沖縄の伝統的な焼き物)”の窯元や工房、販売店が軒を連ねる約400mの通り。琉球石灰岩が敷き詰められた石畳の道や赤瓦屋根の古民家など沖縄らしい風情ある街並みが残り、多くの観光客や焼き物ファンが訪れる。

〇月桃
熱帯から亜熱帯エリアに自生しているショウガ科の植物。沖縄県内では飲料用や薬用、滋養など古くから万能ハーブとして浸透しており、その高い抗菌・防腐作用からむーちー(菓子餅)や肉・魚などを包む葉としても利用されている。葉はポリフェノールを高含有し抗酸化作用が高いとされる他、去痰作用から気管支炎や鼻炎などにも良いとされている。

〇カラキ(オキナワニッケイ)
やんばる(沖縄本島北部)エリアをはじめ九州地域に自生するシナモンの一種。葉、樹皮、根にシナモンのような香りがあり、沖縄では古くから生薬としての親しまれてきた他、乾燥させてお茶として楽しまれたり、お酒に漬けたり、お菓子作りや料理にも使われてきた。
特にお茶は温めやリラックス効果に加え、抗ウイルスや花粉症などのアレルギー炎症にも良いとされ、沖縄では広く親しまれている。
《今回訪問したのは…》

うちなー茶屋&ギャラリー ぶくぶく
https://bukubuku.jp/
〒902-0065 沖縄県那覇市壺屋1丁目22-35(ゆいレール牧志駅より徒歩10分)
那覇市壺屋のやちむん通りにあるギャラリーカフェ。沖縄の伝統”ぶくぶく茶”をメインに様々なお飲み物や、疲れた体を癒す”沖縄氷ぜんざい”を楽しめます。
Instagram:@okinawabukubuku

リフェット代表取締役 福岡県出身。自ら足を運び自らの眼で見ることを大切に、邪魔なくらい現場に出てくる代表。両親、祖父母の影響からか幼少期から食や健康への興味が強く、一時期は料理人を志すも現在は美味しい食事・お酒を楽しむ方に。小学生~大学までバスケ、現在は柔術にハマり身体を労わっているのか痛めているのかわからない日々。自然に帰すと子供より楽しんでいる2児の父。