オイル美容という言葉を聞いたことはありますか?
フェイシャルやボディオイルを使ったスキンケアなどをイメージしがちですが、今回のテーマは塗るではなく、オイルを”摂る”美容・健康について。
「油=脂肪」のイメージが強く、敬遠する方もいらっしゃるかと思いますが、日々の健康や美容というより、実は人間の生命活動において重要な栄養素なんです。
では、なぜ”栄養素”として重要なのか。
オイルの”種類”やオイルの”中身”を分解しながら、お伝えしていきたいと思います。

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まず理解したい「食用オイル」と「脂肪酸」とは
食用オイルは脂肪酸の集合体
私たちが日常で使っている食用オイル(以下、オイル)。その正体は「脂肪酸」の集合体です。
この脂肪酸とは、脂質(油)を構成する最も基本的な成分であり、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からなる有機酸です。
この脂肪酸は、体内での主要なエネルギー源となるほか、細胞膜やホルモンの材料としても不可欠な成分で、その構造によって、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に大きく分けられます。

脂肪酸の主な分類
- 飽和脂肪酸:牛脂やバターなど常温で固体となる。ココナッツオイル、酢酸、酪酸など。
- 一価不飽和脂肪酸(オメガ9):オレイン酸など
- 多価不飽和脂肪酸(オメガ3・オメガ6):DHA・EPA・α-リノレン酸、リノール酸など
因みに、α-リノレン酸やDHA、EPAなど、体内で合成できず、食物から摂る必要があるものを必須脂肪酸と呼びます。
脂肪酸というと「脂肪=悪」のように捉えがちですが、脂肪酸は細胞膜を柔らかく保ったり、細胞膜の構成、ホルモン様物質の材料、炎症バランス、血流機能などに関与しており、必須脂肪酸に限らず、健康的な体作りには欠かせない成分のひとつです。
オイル不足が招く健康不安と美容トラブル
では、この脂肪酸が不足するとどんな問題が発生するのでしょうか。「油を控えれば健康的」と思われがちですが、極端な脂質制限は逆効果になることもあります。
- 肌あれ、乾燥、バリア機能の低下
- ホルモンバランスの乱れ
- 慢性的な炎症傾向
- 血流低下
- 集中力や気分の不安定さ
脂質は炭水化物、たんぱく質とならぶ三大栄養素のひとつであり、欠かせない栄養素。不足したり、摂り過ぎたりすると体に悪影響を与えるリスクもあります。
だからこそ、脂質は“減らす”のではなく、役割をおさえて“選んで”摂ることが重要です。
油を選ぶということは、細胞の材料を選ぶということ。ここを押さえておくと、脂質の見方が大きく変わります。
日常に取り入れたいオイル
ここからは、日常生活に取り入れたい4つのオイルをご紹介します。
1. 亜麻仁油(フラックスシードオイル)
サラダやヨーグルトに少しかけるだけで取り入れやすい植物性のオイルです。

主な脂肪酸:α-リノレン酸(ALA)=植物性オメガ3が60%弱
ALAは体内でEPA・DHAへ一部変換され、炎症調整や血管機能をサポートする必須脂肪酸のひとつです。
そして、あまり知られていませんが、亜麻仁オイルには、α-リノレン酸以外にも「リグナン」という抗酸化作用が高いポリフェノールの一種を含んでいます。
リグナンは植物性エストロゲンとして女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きや強い抗酸化作用をもっているので、亜麻仁オイルは中高年女性の健康維持や生活習慣をサポートするオイルとして注目したいアイテムです。
- 非加熱で使用
- 1日小さじ1杯程度を目安
- 開封後は冷蔵保存
野菜や果物とも相性が良いので、サラダに掛けたり、お刺身に掛けてカルパッチョにしたり、スムージーに混ぜたりするのもおススメです。
2. えごま油
シソ科の一年草「えごま」の種子から搾った油。和食との相性が良く、日本人に馴染みやすいオイルです。
亜麻仁オイルと同様に、オメガ3系の必須脂肪酸であるα-リノレン酸を含んでおり、その他には炎症や酸化に強いロスマリン酸やルテオリンという成分を含んでいます。脂肪酸だけを見てみると、α-リノレン酸の他にはリノール酸、オレイン酸などを含んでいます。
主な脂肪酸:α-リノレン酸(ALA)=植物性オメガ3が60%弱
血流改善や神経機能への関与が研究されています。
こちらも熱に弱いため、加熱せずに使用するのがおススメです。
- 非加熱で使用
- 小さじ1程度を目安
- 開封後は冷蔵保存
キムチや納豆、冷奴などに小さじ1杯程度掛けて食べるのが、習慣化しやすいかもしれませんね。
3. 魚由来オイル(フィッシュオイル)
主にイワシやサバなどの青魚から抽出され、オメガ3系の必須脂肪酸であるDHAやEPAを含む動物由来のオイルです。
青魚に多く含まれると言われますが、DHAやEPAは熱や酸化に弱く、食べ方や食べる部位、時期や漁獲エリアによっても大きく含有率が変わってきます。
| 食品名 | 脂質合計 (g) | n-3系脂肪酸合計 (g) | DHA (mg) | EPA (mg) |
| クロマグロ(脂身/生) | 27.5 | 5.8 | 3,200 | 1,400 |
| クロマグロ(赤身/生) | 1.4 | 0.2 | 120 | 27 |
| サバ(まさば/生) | 16.8 | 2.1 | 970 | 690 |
| サバ缶(水煮) | 10.7 | 2.73 | 1,300 | 930 |
| マイワシ(生) | 9.2 | 2.1 | 870 | 780 |
| ブリ(生) | 17.6 | 13.3 | 1,700 | 940 |
例えば、マグロは脂身が多い(いわゆるトロ)部分だと、100gあたりで3,000㎎~4,000㎎程度のDHAを含有していますが、赤身になると60㎎程度(50分の1)と大きく減少します。
また、カツオも含有量が多いとされていますが、戻りカツオと初カツオ(春に獲れる)を比較すると、その量は10:1(約10分の1程度)になってしまうなど、大きく差があります。
そもそも、魚が自らDHAやEPAを体内で生み出しているわけではなく、そういった栄養素を持った藻やプランクトンなどを食べてカラダに蓄積しているので、海域や海洋環境などによって大きく異なってくるということでしょう。
余談ですが、一般的なお寿司のトロ一貫あたりのグラム数(ネタ部分)が12~15g程度と言われているので、一貫で360㎎程度のDHAが摂れるという計算になりますね。
主な脂肪酸:EPA・DHA=オメガ3系必須脂肪酸
- 炎症バランス調整
- 血小板凝集抑制
- 神経細胞膜の柔軟性維持
- 肌の水分保持との関連研究
同じオメガ3ですが、ALA(α-リノレン酸)より利用効率が高いのが特徴です。
※参考:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より一部抜粋引用
4. オリーブオイル(エキストラバージン)

日常的に使われている家庭も多いオリーブオイルは、70~80%前後がオレイン酸で占められる、オメガ9系の脂肪酸です。
オレイン酸は不飽和脂肪酸の中では比較的、酸化に強いとされており、必須脂肪酸ではありませんが、動脈硬化や悪玉コレステロールの減少など、健康効果についても古くから様々な結果が報告されています。
主な脂肪酸:オレイン酸(オメガ9)が約70~80%
- 酸化や加熱に比較的強い
- LDLコレステロール酸化抑制
- 心血管疾患リスク低下との関連報告
オレイン酸自体は比較的酸化に強いと言いましたが、クロロフィル(葉緑素)を含んでおり、光にあたると活性酸素を発生させて、オイルの酸化が進みやすくなるので、直射日光や蛍光灯の光が当たらないところに保存しましょう。
オメガ3脂肪酸の種類と働きについて
ここでオメガ3系の代表的な必須脂肪酸について簡単にまとめます。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、オメガ3の1日の摂取目安量は、成人男性で2.3g前後、女性で1.7g~2.0g程度とされています。
| 成人男性 | 成人女性 | |
| 18-29歳 | 2.2g | 1.7g |
| 30-49歳 | 2.2g | 1.7g |
| 50-64歳 | 2.3g | 1.9g |
| 65-74歳 | 2.3g | 2.0g |
| 75歳以上 | 2.3g | 2.0g |
| 妊婦 | – | 1.7g |
| 授乳婦 | – | 1.7g |
例えば、先程のトロ一貫で360㎎のDHAが摂れるとすると、6貫くらいの量になりますが、毎日、魚から摂るとなるとなかなか大変かもしれません。(お財布にもキツイですね)
しかしながら、人間の体内で作り出すことができないため、日々の食事やサプリメントなどから意識して摂取することが推奨されています。
オメガ3系の必須脂肪酸(代表例)
| 脂肪酸の名称 | 由来 | 特徴 |
|---|---|---|
| DHA(ドコサヘキサエン酸) | 藻や魚の脂肪に豊富 | 脳や神経の発達、記憶力の維持、目の健康維持など |
| EPA(エイコサペンタエン酸) | 青魚に豊富 | 血液をサラサラにする作用や、中性脂肪の低下、抗炎症など |
| ALA(α-リノレン酸) | 亜麻仁油やえごま油に豊富 | 中性脂肪の低下、血圧抑制、アレルギー・炎症の抑制、脳機能サポートなど |
オメガ3系の脂肪酸が豊富に含まれる主な食品と含有量
- 植物性食品
- アマニ油(小さじ1):2.3g
- えごま油(小さじ1):2.3g
- 大豆(1/2カップ):1.4g
- くるみ(100gあたり):9.0g
- 魚介類
- クロマグロ(100 gあたり):3.2g
- サバ(100 gあたり):3.1g
- シロサケ(100gあたり):2.4g
- ぶり(100gあたり):1.7g
*出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂) 脂肪酸成分表編」および「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より一部抜粋引用
オメガ6・オメガ9はどんな食品に含まれるのか

オメガ6(リノール酸やアラキドン酸)
オメガ6が多く含まれる食品:サラダ油やヒマワリ油、ナッツ、加工食品など
必須脂肪酸のひとつではありますが、現代食では過剰摂取となりやすい脂肪酸です。
オメガ3と同様に、脳や細胞膜、血管の健康維持などに関わるとされていますが、オメガ6の過剰な摂取はアレルギーや皮膚炎など、炎症促進方向に傾く可能性があるためバランスが重要です。
オメガ9(オレイン酸やネルボン酸など)
オメガ9が多く含まれる食品:オリーブオイル、なたね油、大豆油、アーモンド、牛肉など
体内で合成が可能な脂肪酸のひとつです。必須脂肪酸ではありませんが、LDLコレステロールの低減、動脈硬化の予防、血糖値の安定など、いくつかの健康効果が上げられます。
イタリアやギリシャの一部エリアで長寿者が多いのは、オリーブオイルを多く使った食事法が要因のひとつともされています。
ドレッシングやパスタにかけて摂るのもおススメですが、熱に強いという特徴を活かし、少々コスト的には上がりますが、サラダ油の代わりにオリーブオイルを使うことで、オメガ6の摂取を控えるなど、置き換えで摂るのがおススメです。
近年注目の奇数脂肪酸とは

ここまでに上げてきた一般的なオイルに含まれる、DHA、α-リノレン酸などのオメガ3やオレイン酸など炭素数(Cの数)が偶数の脂肪酸に対し、近年研究が進んでいるのが、この炭素の数が奇数の「奇数脂肪酸」です。
全脂質のうちに占める割合でいうと、特殊な例を除くと1%以下とされており、希少な脂質になります。
専門家の中では、存在そのものは古くから知られていましたが、あまりに少なかったため、研究が進んでいなかったという歴史もあるようです。
2000年代に入ってからは様々な研究が行われ、2011~2014年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)では、血清中のペンタデカン酸(C15:0)およびヘプタデカン酸(C17:0)の濃度が高いほど、高血圧の有病率が低いことが示されるなど、健康面での有用性が示されつつあります。
奇数脂肪酸の主な種類
- C15:0(ペンタデカン酸)
- C17:0(ヘプタデカン酸)
奇数脂肪酸の主な由来
- 乳脂肪(牛乳・バター・チーズ・牛肉など)に微量
- 一部海洋由来脂質
ペンタデカン酸(C15:0)とは

では、ペンタデカン酸とはどんな脂肪酸なのでしょうか。
奇数鎖の脂肪酸の中では最も多いとされる(約85%)ペンタデカン酸ですが、近年、生理機能を持つ可能性が議論されており、様々な研究結果から必須脂肪酸として扱うように提言されるなど、美容やフレイル*分野でも注目されています。
・ペンタデカン酸を多く含む食品原料:オーランチオキトリウム(微細藻類)
藻の一種であるオーランチオキトリウムに多く含有するとされています。ただし、すべてのオーランチオキトリウムにペンタデカン酸が多く含まれているというわけではなく、魚油などと同様に、その栄養組成は海洋環境などに左右されます。中にはペンタデカン酸とDHAを高含有する優れた組成の株もあるようです。
このオーランチオキトリウムは、ユーグレナ藻(和名:ミドリムシ)やクロレラなどの藻類と同様に分裂によって増殖するため、食糧不足時などの質的栄養補給という意味合いにおいても注目されています。
・ペンタデカン酸により期待される働き
- 小胞体ストレス緩和
- ミトコンドリア機能保護
- 炎症抑制
- 脂質代謝安定化
などが報告されており、これらをもとに、健康面や美容面において様々な研究や試験が行われています。
肌への影響に関する研究
- バリア機能維持
- コラーゲン等タンパク質産生量の増加
- 赤みや慢性炎症の軽減傾向
- シワ・肌弾力など加齢肌サポートの可能性
健康面への影響に関する研究
- 2型糖尿病リスク低下との相関
- 心血管疾患リスクとの逆相関
- 炎症マーカー低値
- 視神経細胞保護
- 疲労回復
などが観察研究から報告されています。
引用)(株)シー・アクト社「ペンタデシル®含有オーラン油」、「疾病原因として注目され始めた小胞体ストレスに対して、緩和・改善できる天然成分を発見!」 J-GLOBAL天然油脂成分ペンタデシルの糖尿病治療へのアプローチ
参考)「ペンタデシル®が脳や脊髄の炎症を抑える新機能を発見」
*フレイル:加齢により心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下し、健康と要介護状態の中間に位置する「虚弱」な状態や未病の状態を指す
脂質はどんな栄養素と一緒に摂ると良いか

脂質は単独ではなくネットワークで働くため、効率よく活用するためには相性の良い成分と一緒に摂ることがおススメです。
脂溶性のビタミン(A,D,E,K)との組み合わせは効率的な摂取につながり、糖質との組み合わせも適度に摂ることで効率的なエネルギー源となるため、バランスの良い摂取がすすめられます。
脂質と一緒に摂りたい成分と主な働き
- ビタミンE:脂質酸化防止
- ビタミンD:免疫調整
- ポリフェノール:抗酸化補助
- マグネシウム:脂質代謝酵素補因子
- 食物繊維:脂質バランス調整
脂質の摂取に関して注意すること
- 過剰摂取はカロリー過多
- 酸化油は避ける
- 抗凝固薬使用中は魚油に注意
- 保存は遮光・冷蔵
食べたもの、摂取したもので体は作られていくと言っても、すぐに結果が現れるものではありません。摂取した栄養素が体内で働き、少しずつ代謝や分解、エネルギー産生などを繰り返し、様々な形で表現されていきます。
日々の健康や美容を意識してオイルを生活の中に摂り入れるのは、そんなに難しいことではありません。結果を焦らず、少しずつ気長に摂り入れてみてはいかがでしょうか?
ただし、量よりも質、そして摂取バランスが大切という点を心掛けておきましょう。

犀星の杜クリニック六本木院長、みなと芝クリニック名誉院長
●科目:内科・一般整形外科・皮膚科・消化器専門医・消化器外科・大腸肛門外科
●所属学会、資格:
博士(医学)、日本消化器病学会認定専門医、インフェクションコントロールドクター、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本外科感染症学会、日本癌学会、米国癌学会、米国臨床腫瘍学会、日本痔核治療法研究会、日本抗加齢医学会、再生医療抗加齢学会
●メディア露出実績(一部):
NHK「チコちゃんに叱られる!」、NHK ニュースシブ5時、NHK Rの法則、日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、日本テレビ 「ザ・世界仰天ニュース」、日本テレビ 「1周回って知らない話」、テレビ朝日 「林修の今でしょ!講座」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、毎日放送 「林先生が驚く初耳学!」他、多数
(2025年10月16日)

「日常の生活(LIFE)にプラス(+)の彩りを届ける」をコンセプトに、お客様が楽しんで読んでいただけるような記事を配信中。







